わしじゃぁ〜

仕事中、携帯に留守電が入っているに気がついた。
なんだろう、だれだ?火急の用か?取引先か?


(メッセージを再生します。・・・)
『え〜と わしじゃぁ〜』
はぁ!!
え〜と わしじゃぁ〜元気かぁひさしぶり・・・連絡ください
えーと連絡先は********じゃ


それを見て連絡すると、まえの会社で取引先の山田のおやっさんだった。
開発品をなんだかんだと、依頼して、なんだかんだと二人で話し合ったものだ。
お互い、立場が違っていたが、昔の職人気質の研究者だったおやっさんを尊敬していた。
やはり、昔の研究者は年を食ってもモノを作る楽しさを知っている。マーケティングなどない時代からモノを通して、新しいコンセプトを考えていた。


「実はのぉそろそろ、おれもくたばりそうじゃ、研究の後釜をさがしておるのじゃが、お前さんどうだね」
それは、数年前だったら、私にとってすごく魅力的な提案だった。
かねがね、中途半端な仕事ではなく、職人気質の仕事をしたかった。
しかし遅かった。もう物を創って人を幸せにできない。
『私は廃業したんです・・・』
『そうか残念じゃのぉ・・・お前さんだったらいいセンスだと目をつけていたんじゃが・・・』
こういう事を言われると私もつらい