『消しゴム拾ってくれてありがとう』

なんていい陽射しだ!丘の上からセンサー感度良好

『消しゴム拾ってくれて・・・ありがとう』
『はい、ええ』

!!


あれだ!あれは今もあるのか!
方向は真東だ。そう東の記憶だ!いい日に自転車を漕ぐといろんな意識が回るんだよね過去の事、今のこと、これからの事。そんなんが混ざってブレインストリーミングを始めるんだ。そんな中から回想が巡る。あそこに行ってみよう。まだあるかな

日差しの中に、あるはずの文字が消えていた。


ここだ、ここだよ。あった・・建物はそのまま残っているが・・
綺麗さっぱりともう学園は消え去っていた。


 此処にかつてあったのは大道学園という予備校&進学塾。理系の進学には定評があってかつて高校時代私は此処まで通っていたんだ。まぁ当時ぱっとしない学力の私だったが、鮮明に覚えているのは、阪神間の山手に住む真のお嬢様に出会った事である。正直に言おう、可愛かった。何より立ち振る舞いが17歳を超えて美しかった。今だから美化して言うが本気で何者に寄せ付けない、透き通った線の細い燐としたオーラを持っていた。ポニーテールが本気でいい感じで可愛かった。神戸女学院という、並みの男子が手の届かないお嬢様学校に通っていた。センター試験880点を採って『できませんでした』と言ったあの子だ!
 そして、お茶した時に言った最初で最後の会話が『消しゴム拾ってくれてありがとう』だ 
 なぜ、その子とお茶をしたか(できたか)は偶然だった。選択科目ということもあって化学のクラスは人数が少なく、男子は俺と相棒のイケガミ君(そんな名前だった)だけだった。化学だけは彼女らについていける力はあった。教える先生もまさに自由で、なんか伸び伸びしていた。そんな化学の先生がセンター試験が終わった後、生徒全員に山手の上等なカフエでお茶とケーキを奢ってくれたんだ。今考えたら、ありえないよな。受験勉強対策というサービスしかしない学校が多いが、この学校はそんな厳しさの中にも、ちょっとした人間性が在った気がした。初めはクラスのみんな本気か!?って驚いたが、普通におごってくれた。阪急御影の北側にある、今で言うセレブのカフェでケーキセットを奢ってくれた。貧乏人の私には、出てきたティーソーサ三段重ねが高級感のプレッシャーを感じたものだった。ウエイトレスの言葉使いもまるでお屋敷のメイドみたいだった。
静かに無言で向かい合わせに座った彼女の姿が今でこそ鮮明に思い出してきた。そうだ私にとって最初のカフェ



 その後彼女はどうなったか知らない。こんなご時世だから
頭がいいし、家も金持ち(金持ち以外ありえない)だと思うから、たぶん外国にでもいるか、いい縁談でも受けて一流企業で家柄のいい金持ちの妻にでもなっているんじゃないかな。


あの線の細い凛としたオーラはなかなか持ち合わせている女性なんていないから


時は遠くに過ぎに去り


ケセラ・セラ