マネジメントは生命進化の操作
生命進化の計算手法を他の場面に適用する例は、マネジメントにも応用される。最近面白かったのは、チェーンレターの文面が変化していく様子を調べ、元の文面からの変化を進化の系統樹のように示したヴァンスデール教授の論文でした。受け取った手紙を次の何人かに出す時に、自分なりに分かりやすいように書き換える、それを新しい遺伝子が組み込まれて進化する様子に例えて考えたわけです。
AAAAAAとBBBBBBという並びの遺伝子を持った親から、AAABBBという子供が生まれる。子にAACCCCという並びを持ったウイルスが入り込んで、孫世代ではAACCBBに組み換わる。生命の多様性はこうして生まれます。多様性があることで、環境が変化した場合の生存可能性を高めているのです。
こうした生命進化に通じる考え方は、企業経営においても感じます。新しい経営陣を迎える、つまり新しい遺伝子を持ち込むことで、環境変化に負けない次世代の企業に進化する。プロジェクトなら、同じ考え方の人たちばかりではなく、様々な考え方をした人を入れて活性化させる。時には全く異質の、ウイルスのような案を俎上に載せて革新を起こす。こうして例えると、経営とはまさに生命を扱うものだと実感します。