潜入調査
この空間の中だけは此処は日本じゃない。
ピカピカ光るライト、むせる煙草の煙。人の話し声なんて聞こえやしない大音量。今時見ない、ピチピチの服にデカイ胸と尻!、文句あるか主張しているかの露出。昼間の世界では見ることがない光景である。iphoneで写真でも撮って帰ろうかと思ったら、『写真は撮るな!』と屈強な黒人に厳重な注意とチェックを受ける。
若くないからこの空気に馴染むのは難しい。ま、目の保養にはなる。雰囲気と感覚が解ったので今日は、あと一杯ビール呑んで帰るか・・・昔はできたことも齢をとると臆病になる。
・・・・2時間後・・・・・
ラテン系の美女とカンナムスタイルを踊っていた。
(ピチピチギャルってこういう人を言うのね、しかし何故こうなった!?)
・・・・1時間後・・・・・
何故だか美女を侍らして、奥のソファーで水タバコを吸いながら、密談じみたことをしていた。(これってさ、よくアメリカのドラマで見る悪人の画だよね、多分いま自分のツラはかなり醜悪な顔をしていると思う)
『よう、俺はアキラだよろしくな』
『シャッチョウさん、私ルイ言います。オッパイたくさんの店やってます』
『そうか、おっぱいがいっぱいだな!、はいはいわかった』
次から次へ紹介されるよくわからない人物と次あら握手しまくっていた。
(何故こうなった?)
いまから、昨日の夜について巻き戻してみよう。
夜12時過ぎてうっかり終電を逃した僕は、最近気になっている個人的な調査をやってみることにした。そこで、在名古屋の外国人への聞き込みが必要かと思っていた。それに今年の目標の一つとして、外国人の友人や交友関係を広げるという課題の一環でもある。
で、一番外国人向けに流行っているclubに取りあえずやってきた。前述のように目の保養してさっさと帰ろう(逃げよう)と思っていた私。かつては、神戸だけでなく様々な旅先のclubでハジていたが、もうそんな気力なかった。clubは、裏の情報が交換される場所、街のより深い情報を得るには此処を抑えるべき。ハードボイルドの話には必ず出てくるあれだが。初めて独りでノコノコやってきた私は空気に圧倒されて、何もできなくなっていた。
そのまま帰るのか?
(キミの名は?)
(そうだな、じゃAkiraで)
過去の記憶からふっと言葉が走った。そう、僕の名はAkiraだった。その名は生まれたのは、こんな、日本人が来ないClubで生まれた。あの雑踏の中、多くの仲間と過ごして駆け抜けていった日々が僕にはあったんだ。それを、全うな社会人に染まりすぎて忘れ去っていたのだ。忘れ去ったあの感覚が蘇ってくる。
まず、初めて異国のclubに来たときは焦ってはいけない。まず、どのような構造なのか?出口とトイレは何処か?どんな系統の人間が出入りしているか?見るべきところはたくさんある。まず、ワンドリンクのチケットでビールをゲットする。ビール片手にさりげなくうろうろしながら、よく観察する。ヤバい国ほど逃げ足がモノを言う。本能でまず離脱路を先に確認してしまう。
次に場が盛り上がってきたら、行動を起こす。いくら美人だからといって、いきなり女性に声をかけてはいけない。まず、仲良くなるべきはこのclubの常連で、顔役と思わしき男だ。ある程度観察していたので、それとなくあたりをつけて、さりげなく近づく。この場合酒を出すバーカウンターがおすすめ。で、乾杯をして、その人物に新顔だという事を紹介して、気前よく酒を奢ろう。
そうすると、相手も気をよくしてくれて、店のマスターからいろんな人を紹介してもらえる。重視すべきは紹介してくれる人なのだ。これは欧米のビジネスでも言えることだ。
で、愉快でバカでノリがいい人間であることを売り込む。ま、clubなんでそれは楽しもう。しだいにいろんな話が聞けて、街の話が引き出せる。
そんな、流れで僕は最終的にソファーでくつろぎながらなんか、何処の国籍かわからん女性といちゃつきながら水タバコふかしているわけでした。
しかし、体力はどうにもならず、5時ごろついに気分が悪くなって始発で帰ることにした。
帰りのトイレで吐いてたいへんだったが、なんとか帰宅できた。少し年を食って体力がおちたのはしょうがない
そういえば英語を一度も使わなかった。英語の勉強にならなかったじゃないか!
不思議なことにみんな英語じゃない。圧倒的にラテン系が多い。というより彼ら彼女らブラジルとペルー人じゃないか?てゆうか、君何処!?ウクライナ!!