その7


 とりあえす出発1時間前に駅に戻ってきた。駅のホームは自由に人が入ってくる。
さて、チケットをもってしばらく考えた。時間以外、この切符読めない!
少なくとも、ベンガル文字は数字すらアラビア数字ではない。どの電車で、どの車両かさっぱりわからん!!
さてどうするか?
まるでねずみのように、列車の屋根の上を子供が走り回っている。それにのってどうするんだ?と聞きたい。どこかへ行ってどうするんだい?そして俺はこんな列車の乗っていいのかい?ダメだ。
 おそらくあれは3等列車のメイルトレイン。車両も薄暗く夜だというのに車内に灯りらしきものが一切無く、ギラギラとした瞳だけが光っている。檻のようだ・・・あれには本当に乗れない。


切符をどう見ても列車の判別が付かない。そこでそこの身なりのいいおっちゃんに聞いてみる。スーツ着ていたら(大丈夫だろう)ベンガル人は親切で少々クドイとは言ったもので、これではない大丈夫だ。とみんな親切にしてくれる。


『キミはどこから来たのかね?』
浅黒い肌のずきんをかぶったおじさんが見かねて、私に声をかけた。
「日本です!」
そのおじさんは深く考えてこう言った
「I supprt you」
そう一言。おじさんといろいろ話をした。
”私は同じ列車に乗る予定だから安心したまえ。キミはとても幸運な人間だ、今日チケットが買えたのはバングラデシュ人でもかなり珍しいことなんだ。私はキミを助けよう、なぜなら私はこの国では少数派のブディス(仏教徒)とだからだよ、キミと同じ・・・

「あれだ!」
列車は予定より30分ぐらい遅れてホームに入ってきた。しかし、かなり予想していた場所より手前のホームに到着した。しょうがないので、停止した列車に乗り込もうと、手前まで歩こうとした、その時。
何と列車は動き出したのだ!!
停車時間なぞ、あって無いようなもので、ゆっくりと列車は進みだした。これはおじさんも俺も焦った。「おい!あれの車両だあれに乗れ!」動き出した車両に走りながら、入り口の手すりを掴む。そして飛び乗る。こんなドラマティックな乗り方アリか!!昔の西部劇であるこれでは
「おじさん!!」
「ワシのこといい!!」
必死に車両に掴まった私であったが、親切なおじさんは、まだホームにいた。遠くなって行く。



乗るのに必死で御礼言えなかったな・・・


コンパートメントの座席に座ると今日一日の疲れがドッと出てきた。そして、すぐ眠りについてしまった。

三線軌
バングラデシュではメーターゲージと標準軌が混在する。西行きは標準軌で東行きはメーターゲージである。




気がつくと朝だった。到着アナウンスがすぐ流れた。なんとあの椅子の状態で、ぐっすり寝込んでしまい気がつけばチッタゴンの駅に着いていた。体があちこち硬いが、体力は十分回復している。