謎のポン酢屋のはなし
「ここは飲食店ではありません・・・」
(なんだこの禅問答のような謎かけは?)
「まず、これを読んでくれますか、理解できたらどうぞ」
(当店はポン酢屋です。ポン酢に会う料理をつたえる料理教室です)
そのような趣旨の内容が2行ほどさらりとかいてあるのだ。
(つーか何を言ってるのだ?文字はそのまま読めて理解できても、何をどうすればいいのかわからない。)
京都は観光地である以外に大都市である。京都の都市性というのは大阪や神戸と違うものがある。其処に住む京都人というのは、捉えどころがなく、本質を知るのは難しいのだ。一般にいうと京都人は腹黒いというイメージがつく。本当にそうなのだろうか?
大阪人ほど距離は近くなく理解が難しい。そして京都はのたまうのだ。
『理解できへんなら、帰るよし』
それが京都人である。京都っぽいもサービスや商品を開発して観光客に売りつける。それは非常に巧みな技は毎度感心してしまう。しかし、私は同じ関西人なのでその手口が解っている。そんなビジネスの京都を知っていても京都人自身を僕はしらない。僕はこの辺りを知りたかった。
そこで、京都に行っても生八つ橋とか各種抹茶製品などに見も振り向きもせず、私は夜の京都をふらふらしていた。
そんな京都の夜を散策したときである
お!飲み屋。なんか雰囲気が気になる入ってみよう。そのお店は”モミポン”と書いてあった。
なんか黒板にややこしい事を書いてあるが、飲み物とおかず3品で●●円と書いてある情報だけを頼りに店にはいる。
なんか、少々入りづらい店である。
入ったとたん、でっぷり太ったネコをなでてくつろぐ男性がいた。
「あのー」
(ここから冒頭の会話が始まる。その間でなんとも気まずい空気が流れた)
立派なネコが2匹僕に寄ってきた。
ネコ「あんた誰?なんぞ用か?とりあえず私をさわるよし!!」
とネコにあるまじき積極的な性格で私にすり寄ってくる。
ややこしいので京都的なイケズなやりとりで帰ってもよかったが、ネコと戯れたかったので怯まずこの店で「ポン酢を食わせろ!!」とそのまま強引に続ける。
なんだ、かんだと料理を通してポン酢の話をすることで店主とうちとけてきた。
料理のお品書きとお酒を自由に注文して食べれるというシステムはどうみても料理を出す店にみえるがあくまでも飲食店ではないそうだ。値段は書いていない。受け手にある一定の理解レベルを要求するのが京都人なのだ。
料理店だといろいろメンドクサイのでこういう形にしているそうだ。ネコが自由に動き回る飲食店は成立しない。飲食店というより、他人の家のダイニングで試作料理をいただいている感じだった。
そしてポン酢を売っている。ポン酢屋であるのは間違いない。独自のポン酢”モミポン”を御一人で卸しているそうだ。正しいポン酢というのはとても少ない(店主いわく、このポン酢を醸造している蔵しかないそうだ)。だし屋や醤油屋がついでにつくるものだが、本当にポン酢として仕込んでいないとのこと。
、
ポン酢を使ったカレー。
カレーであってカレーでない味だった。不思議な複雑な味。
たまにいるんだよね「この料理にもポン酢入っているんですか?」と聞く客
「まったくあきれるわぁ」
まったく面白い店である。こんな店に出会うと私はズクゾクします。
そうなんです、こんなややこしい店たまらなく僕は好きなんです。