月と女性の絶対的な何か
「不思議な月だね」
「そうだね」
お互い顔を見合わせて
「ふふ!」
すこし微笑みあった。月は不気味な色だったが、瞳はとっても綺麗だった。
僕たちは不思議な月を二人で眺めていた。痺れて動けないぐらい幻想的だった。村上の春樹の1Q84のシーンを思い出すような、なんとも言えない不思議な事が起こりそうな空気だった。その言葉にならない心が通いあった瞬間、なかば神秘的なことが起こったので記録した。
年末ということもあって、僕は疲れてた。トラブルとかもあって少しなんだか人に不信を持つようになって、何事にも嫌気がさしていた。
その日は月食だった。月を二人で見て、僕らはお互いの瞳を見た。僕らはどうすると促すこともなく、ごく自然に僕と彼女は手のひらをそっとあわせた。血の通った暖かさゆっくりと伝わると、僕の心の中に気力が湧いてきた。それは勢いがあってドッと相手から流れる感覚ではなく、深い深い湖の底から湧き水が静かに湧いて出てくるような、そんな感覚だった。気力をもらった訳ではない、まるで、自分の中の塞いでたものが消えて内面から湧いてきたのだった。
こんなにゾクゾクしたの久しぶりだ。この感覚・・・僕は・・いや俺が何者か思い出したよ。
言葉じゃない
役にたつとかじゃない
エロいじゃない
その存在が、僕を救ったんだ。僕を導いたんだ、その瞳が大切な事を気づかせたんだ。
ありがとう
女性の力ってすばらしい。