猫おばさんの後ついてゆく
『そぉーねぇ・・・そうだわ』
『それでは、こんな物件はどうでしょう?』
私の会話で何か思いついたのだろうか?
創業して40年、この街を見続けてきた不動産屋のおばさんはゆっくりと、丁寧で品の良いおばさんだった。おばさんデカの市原悦子みたいな感じで、何かしら無条件に脱力させてしまう喋り方だ。その物腰柔らかさの芯は堅くてぶれない職人のよう
おそらくそうだろう
このご時世なのでもっと経費を削減しようと考えた。そして、行き着いた先がこのおばさんの不動産屋さんだった。
おばさんは猫のように裏路地を抜ける。
私もかなりこの辺り詳しいはずだが、知らない裏路地ばっかりだった。
通りを通れば、顔見知りなのか挨拶していく。地域密着とはこういうことなんだろう。
表通から確実に見落としていた路地
そこは、本来住居用の部屋があるとは思えないビルの中にあった。それは不思議なバルコニーを持った部屋だった。バルコニー四方を雑多とした不思議な空間に囲まれた不思議な中庭だった。
四角く切り取られた空が印象的だった。
まるで九龍城砦の中に来ているようだった。
まるで、トワイライトゾーンに落ちてしまった感覚だった。
猫の後をついて行くように
そんな道あったっけ?と思うような路地を入って
暗い建物の中を抜けて
階段を上がったら
この部屋があったんだ
夢なのか?不思議な体験だった。
こんな話があったような・・・
チャシャネコだけにへんな空間に落ちてしまった。