非情なるプロジェクト1

本内容は空間思考研究所で開発したシステムにより作動しています。
本内容フィクションです。
本内容は物語になっております。
内容はとっても長文です
内容はやや謀略にまみれています。
内容は恥ずかしいので読まないで下さい
登場人物は架空の人物です


「ちょっと例のプロジェクトに関して相談なんだけど」

 新橋の飲み屋で田辺さんが切り出してきた。田辺さんは、提携先の企業で何かと一緒に仕事をする。本社にも一度研修に来た会社公認の仲間だ。関西に本社がある企業は、東京に本社があって東日本を営業エリアにもつ企業と提携をする事はめずらしい事ではない。今回仕事に関して細かい打ち合わせを兼ねて食事をしていた。髪は染めているが、派手ではなくオフィスに好感を少し与える程度のふわりとした風貌。その彼女から私は特にメンバーとして関わっていない例のプロジェクトに関して相談を受けた。

 例のプロジェクトは難易度と規模が大きく、大企業の利害も絡んでいいるため私のような下っ端には特に縁がないと、私は決め込んでいた。田辺さんも例のプロジェクトのちょっとしたアシスタント程度に関わっているぐらいだった。まだうちの会社と関係を持って1月ぐらいの田辺さんもその内容に関して多く知らされていない。ちょっとした取次ぎ程度のものだ。

 まったく関わっていないが、プロジェクトメンバーは隣の机のにいるのでどんな作業しているかはわかっていた。
しかし、この例のプロジェクトに関して気がかりな点が私にもあった。それはプロジェクトリーダーがクライアントに送るメールには常にBCCで私にも送られて来ていた。したがって秘密裏におおよその内容は私は把握していた。
たぶん、リーダー不在の時の保険のようなものだろう。


「はい、何でしょう?」
「クライアントの下田製薬なんだけど、今回のプロジェクト、秘密裏に監査が動いているよ。どうやら社内でプロジェクト推進派と反対派で強い折衝があったみたい」
「そう言えば以前田辺さんは下田製薬で働いてたもんね」
昨今では派遣やら転職やらで会社が変わるのは当たり前。彼女が今まで関わった企業に下田製薬があるのは周知の事実だ。そのこともあって例のプロジェクトに後からメンバーに付け足された。しかし今は同業でもなく関係ない企業だ。
「でも、推進派の武田さんはキレ者ですよ。頭の回転も速く動きに無駄が無い。」
今回の弊社担当者として武田さんという人物がいる。私も一度名刺交換したが、仕事が出来そうな覇気を感じて背筋に冷たい汗が流れるたのは鮮明に覚えている。間違いなくビジネスエリートだ。今回のプロジェクトは下田側の厳しい要求に応えるので精一杯だ。その手厳しい要求をバンバン出してくるのがその武田さんだ。
「武田さんの仕事でこの件に関して動いているのだけど、びっくりしちゃった。まだ本社で事前資料出来上がってない事でチクチク指摘されたわよ。デリケートなタイミングだし」
ああ・・恵さんが以前ミスった件ね、あれは隣の席で情報の交通事故が発生していたな。
「『チョロ子〜さっさと作らせろ』って打ち合わせのコーヒー代こっちでもたされたわよ」
「それは申し訳ない。私から恵に確認しておきましょう」簡単な見解とアドバイスでその話はすぐ終わった。

会話の違和感

アルコールも入っていたし軽い愚痴ぐらいだった。それに出席していたのは他にも何人かいて、別件で多く話していた。しかし、その後、田辺さんが妙に引っかかった。
あの男・・・武田さんが元同僚の後輩の田辺さんをあだ名で呼んでいる事だ。
そりゃあの田辺さんと武田さんはプロジェクトが始まる数年前は、同じ会社で働いて仕事でもかかわりがあったそうなんで、話やすいんだろうね。というのが周囲の認識だ。
しかし、引っかかる。私の脳内空間思考研究で開発したシステム、XXCが何か反応している。XXCは個人的に開発した思考システムで現段階はあまり役にはたっていない。ちょっとした予兆から実体を引っ張り出すのだが、いま一瞬実体が見えた。
一度しか会ってないが、武田さんは他人をあだ名で呼ぶような人間ではない。世間話や冗談は言うがそれは、あまり隙がなく、戦術的にやってるようだった。武田さんは社内、社外とも常に気を張っていてどちらもあまり信用していない感じがする。いくら元同僚で女性でもだ。

疑問には蓋をしない

 暇な時に、田辺さんの周辺情報を洗ってみた。これはいわゆる退屈な仕事の合間の趣味。そういえばこの前飲んだ時言ってたな自宅は深川って。数年前は下田製薬研究開発部在籍。1年ちょっと前に契約を解除している。
武田さんは現在下田製薬の事業本部。今回の下田側のプロジェクト責任者に近い。
「今週は海外出張中だから自宅に送付ですね。かしこまりました」
隣の席でその件の人物と電話でやり取りしていた。さして重要でもないが、会社に送ると間に合わないので合同出張の際の航空券を送るようだ。無造作に置いてあるヤマトメール便のあて先が”深川××3−1−10”


ん!?


深川・・武田さんも深川に住んでいるのか・・・ハッ! 急いで前回の資料をひっかき回しながら、たまたま出ていた田辺さんの自宅住所を見てみた。同じじゃないか。



・・・・・ヤロウたち全員グルだ!



 あああ・・ハメられた。あの二人他人を装って、なんと秘密裏に入籍していたんだ。単なる元同僚と新婚の奥さんじゃ情報のパイプラインがまったく違うやん!てことは田辺さんから(例のプロジェクト意外も含めて)は武田のヤロー(もうこここまで着たら)に俺の行動は筒抜けってことだ。用意周到に別姓で別々の会社に在籍して・・今回のプロジェクト発足以前から仕組まれていた事だ。
 切れ者の武田が当時派遣で評判がよかった開発部の田辺さんを秘密裏に口説いて、スパイに仕立て上げたってことか(ちゃんとした職場恋愛だったかもね。でも、プロジェクト遂行に自分の奥さんを使うって・・)なんてヤローだ。ということは?BCCでメールの内容を私に送るように指示したのは、プロジェクトリーダーじゃない武田だ!(一度しか会っていないが既にマークされていたんだ)こんな戦略立てるやつは普通じゃない。まともな発想じゃない、武田意外にもフィクサーがいるな。こんな非日本人的な戦略思考が立てられるのは”名前も言ってはいけないあの方”しかいない。しかもプロジェクトは水面下ではもう何年も前から影で始動していたんだ・・・
ってことはあれもこれも!こういうことも!戦略的に狙っていたのか・・


まいったなぁ、知らなくていいこと知ってしまったぞ・・・少し腹が立つが、この際何も知らないふりをして、少し踊っておこう。田辺さんをうまく利用して武田に情報流してもらいますか。

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