ぎょうざスタンドの夜

ハイ！ナンニシマショウ
「餃子定食・・・・・」

安っぽいクリスマスソングが流れる暮れの街、本当にバーゲンとか何とかとてもうざったい。
そんな事とは無縁の人通りの少ない地下街の外れ。いつもどおり、静かに餃子スタンドはあった。
餃子スタンドってのは、餃子がメインの食堂で、ほとんどの店はカウンターしかない。

店は静かだった。
客は男３人。独り様で３人
狭い店では、３人でも十分に感じる。

「あい」（ごはんを茶碗にもって手渡す）
「おい」（もらう）
「あいよ」（スープをついで渡す）
「はい」（受け取る）

餃子はまだフタ付きの鉄板でジュジュウ音を立てて焼いている。
静かに品よく餃子を咀嚼する音だけが、響くぐらい静かであった。それがなんとも落ち着く。
よろすがせわしくとも、この餃子スタンドはいつものまま。（こんな場所までクリスマスツリーなんか置いていたら怒り狂うけど）餃子とビールが、今日一日の疲れを癒す。

暗い感じがするけど、これはとっても優しく、何人たりとも邪魔されない男の時間だ。おのおの餃子を食べながら暮れの思いにふけっている。

宇都宮が餃子の街ですか・・・あそう・・・神戸は別に餃子で町興しする必要も無いし。昔から普通に餃子の店がある。神戸にとって庶民中華は毎日の日常だ。餃子の皮はすぐ破れるし底は焦げてる。餃子は隣の餃子とくっついている。よくよく考えれば、つくづくいい加減な料理だが、日本の餃子とはそういうもだ。

メニューはバンバンジーとか水餃子スープとかもあるけど、餃子スタンドでみんな餃子定食を頼む。もちろん、ゆでみの水餃子でなく焼き餃子。なぜだか、餃子スタンドのカウンターでは、餃子定食以外イメージでのだ。それしか許さない空気が漂っている。

男の餃子タイムは静かに過ぎていく・・・・・