ある突然の死
Uの字のカウンターにはかつての仲間が喪服でそろった。
誰もしゃべらなかった。
全員のグラスに酒が注がれた。おめでたくないので乾杯とは言えなかった。
沈黙を破るようにタカモトさんが言った。
「もう1杯足らないよ、ジャギさんの分がないよ、俺からつけといてくれ」
(この人さすがだ・・・そうだよな・・・それが言える。さすがセンスのある男、タカモトさんだ。)僕は感心した。
「ジャギさんも飲んどくかぁ・・・一杯注ごう」そう言ってみえほさんはビールを注ぎ、ジャギさんの写真の前に置いた。
『ジャギさんに・・・・・』
全員静かにグラスを挙げ黙とうした。
今日はジャギさんの通夜だった。
とても悲しい状況だったが、とてもドラマチックなワンシーンのように鮮明の美しさがあった。
現実はドラマよりドラマティックだ。
つい先日まで飲んで過ごした仲間が、何も言わずに突然死んだ。集まった仲間は何とも整理がつかなかった。通夜で彼の死に顔を見て確信したら、急に悲しみが溢れてきた。「本当に死んでる・・・これ・・・どうしょうもないやん」そうつぶやいた。
(そない、なかんでもええやんアキラくん)
彼の声の幻聴まで聞こえる。
付き合いの長い”ゆみちゃん”は涙が止まらないようだ。気持ちは僕もよく解った。だから僕も涙が止まらない。
僕らは大切な時間を共有していたんだな・・・それに気づくのは遅い。
「ジャギさんとどういう経緯で知り合って仲良くなったか思い出せないんだ」誰かが言った。
そういえばそうだ。この場にいる面子全員がそうだ。お互い、初めて知り合った瞬間というのが曖昧だ。共通点があまりない。
この店で飲んでる。元町の高架下、通称”モトコー”で飲んで知り合った仲間たちだ。
年齢、性別、背景それぞれ違う。あらためて見渡すと何とも不思議な集まりだ。
しかし、凄く仲がいいか?と言うと、そうでもない。
ただ”仲間”なんだ
僕らは何かを共有している。
なので、僕らは泣いている。