本のたび 素敵な妄想

僕は実家から部屋に帰る途中に本を読んでいた。
読んでいた本はもちろん大好きな村上春樹、三ノ宮のトンカさんで買った『回転木馬のデッドヒート』を読んでいいた。いい感じで読んでいて面白いなぁなんて読み進めていたら、乗り換え駅に付いていた。
(しょうがないなぁ、しおり・・・あ・そうか、古本だから無ないのか・・・ん!?)


本の間に挟まっていたのは、チャイナエアラインのボ−ダリングパスの半券。前の持ち主しおり代わりに使っていたみたいだ。半券には
NAME OF PASSENGER HAMADA NANA
from FRANKFURT
to TAIPEI
と書いてあった。
ハマダ・ナナ
 もちろんまったく知らない人だ。でも、何故か奇妙に好感が持てた。彼女は日本に帰る途中にこの本を読んでいた。僕は名古屋に帰る電車の途中でこの本を読んでいる。多分、時折窓の景色を見ながら、この文章について同じように『ふーん』と感じているかもしれない。そう思うととても、不思議な感覚になり、楽しくなってきた。これも村上春樹の文章を読んでいるので、ちょっとしたノリが私にはあった。フランクフルトからチャイナエアライン台北経由で帰ってきたハマダ・ナナさんが機内でこの本を読んでいることを妄想してみた。たぶん村上春樹を読みながら旅行するなんて素敵だとおもう。少なくとも僕の感性はそう感じる。

彼女は若くも無いが、そんなに歳をとっているわけでもない。本の文章を借りれば”彼女はびっくりするほど美人でもないが、人目を引く程度には美しく、魅力的だった。育ちもよく誠実で、がつがつしたところがない。性格は素直で、とても綺麗な歯並びをしていた。第一印象はそれほどでもないが、回をかさねてあう度に感じのよくなるタイプの女性だった。”

彼女を勝手に設定づけ、何故フランクフルトに行ったかストーリーを考える。とっても楽しい。まさかレーダーホーセン(注)を買いに行ってないだろうか?まったく不思議と興味深い妄想で楽しめた。



(注)『回転木馬のデッド・ヒート』には、お母さんドイツ旅行に行ってレーダーホーセンを会に行って夫と離婚を決意するという奇妙な短編がある。