連中は容赦しなかった。その徹底した合理性の背中がゾッとした。その目で、合理的判断のもと連中に招聘されたのは他でもない私だった。


賽子を振ったらこうなった。


 5人で合計10個の瞳が、私を凝視している。5人のうち同世代の人間などいるはずもなく。何でも鉛でも飲んだような張り詰めた表情をしている。重たい雰囲気ゆえに重役と言うことか・・・それにしても日曜日なんぞに集めなくてもいいのに。それだけ重く扱われている事に正直嫌気がさした。つまり私はこの空間に入った時点で詰まれていたのだ。
『気づかないうちに王手と来たか・・・』


 5人を私1人で相手にしなくてはならない。駆け出しの頃は、そこに立つだけで震え挙がっていただろう。しかし、あれから6年が経過した。今は不思議と落ち着いている。戦う意味は何処にあるか?自分はどういう人物であるか?そこに確固した揺らぎが無い現在は、どの手で攻めて来ても切り返せる自信があった。 プロとはそういう事であるという意味を自然に自分も身につけたようだ。


私は自分の能力を過信してはいない。自分の能力を知り尽くしている事こそが能力だろうと思う。