月森


ここに来ると考えてしまう。いやたそがれてしまう。
今まで会った人の事を思い出して考えてみたり
旅を考えてみたり。
カフェってエンターテイメント性は何も無い。あるのは、自分自身にある。
今日は月森に来ている。月森は神戸大に行った帰りに寄る事にしている。
月森は細部まで荻上直子の映画を再現したようなカフェである。まぁつまり『めがね』と『かもめ食堂』だってことだ。この究極なぐらいのダウナー感は時間の観念を強制的に消し去ってしまう力がある。

女性客が多いと思いきや男性客が多い。男は考える。そして紙と鉛筆を用意する。その状態で長い間過すのだ。
ここは言わば精神と時の部屋だ。時間の観念は消え去り、読書や考え事をしなくてはならなくなる。見た目には何も起っていないが、男は今たそがれている。過去の記憶から、いろんな真理を呼び覚まそうとしている。ある意味この空間は究極にやさしく、それが残酷だ。

私もいろいろ考える。旅に出なかった自分を責め、新しい旅がこの空間から生まれるのだ。
思考は無限大の資源。その資源を生むのはカフェだと僕は思う。