再会を愉しむ  

人生 相見ざること 
動もすれば参と商の如し・・・・


  杜甫 衛八処士に贈るより


かつて、一度人が別れれば、偶然再会する確率は天文学的数値になる。
携帯電話があると偶然に再会する喜びが薄れていくような気がする。
東京に住んでいるらしい。
これでは、偶然すれ違うことすら難しい。


某会社主催のセミナーにて

 
そういえばこの会社は山田が就職したところだったな・・・・
しかし常識的に考えて、大勢の社員の中で彼を見かける可能性は低いだろう


ところが彼は玄関で客を迎えていた。
いきなりかよ・・・・
「弊社主催のセミナーにご参加いただきありが・・・・」
「元気で何よりだな山田」
「・・・・・・長沢さん!!」
「え!?なんでここに!!??」
「とりあえず話は後だ、受付はどこだ?」
「あわあわ  ええっぅ 」
「相変わらずだな落ち着け山田、それと汗かきすやで」
軽くの肩を叩く
「すいません」
「まさかA社の方って長沢さんのことだったんっすね」
「ああ、ほんとだしっかり名前がある」
「本当にビックリっすよ!」


こいつ暑苦しい雰囲気は、社会人になって一年経過しても変わらんな
見事な下っ端ぷりは懐かしくも思う


その後、改めて彼が挨拶に来た。
営業マンの当然の行為である

「本当にお久しぶりです。」
「みんな長沢さんに連絡がとれなくなったって言ってましたよ※」
「山田取りあえずだ・・・・」
「私A社の長沢と申します。今後ともろしくお願いいたします。」
と名刺を差し出す。
「ああっ これは失礼」
とビジネスの場なのでセオリーのことを行う。
「やつれましたね長沢さん」
「仕事と歳月の結果だ」
「うぉーーーーさすが長沢さんっす!」
「そうか・・・ところで山田、ドラゴンボールいまでも好きか?」
「超ーーーーー好きっす!」
「プッ」
思わずなんかだか、少しうれしくなった。
なんとも言いがたい感情だけど。

多分、東京に出てきて携帯で連絡取り合っていたら、お互いこんな感動は無いだろう。


帰りは彼の上司が見送りに来た。
「本日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「山田はたいそう喜んでおりました。今後とも御贔屓に」
「そうですか・・彼はバカだが決っして人を裏切るやつではないです」
「存じております」
「山田を頼みます」
「承知いたしました」
上司がニヤッっと笑う


できる上司だ、山田も幸せだな。
やれやれ、今日は久しぶりの再会が楽しかったのか
ガラでもない親心を出してしまった
まったく憎めないやつだな山田は・・・・



※私、MAD HATTERは上京の際、携帯に登録していた電話番号及びアドレスをほぼ全て抹消していた。